イノベーションのジレンマとは業界最大手の企業が顧客のニーズに最大限答えようと予算をつぎ込みサービスの品質を高めようとするとイノベーションの時代の流れにおいてかれてしまうという考え方。ハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセンが提唱したフレームワークの一つである。
目次
イノベーションのジレンマとは?発生原因とその対策
既存プレーヤーが破壊的イノベーションを持つ新興企業に力を失うメカニズムを説明した経営理論です。
つまり、わかりやすくいうとある銀行の大手が新参のテクノロジー企業に負けてしまうという原理を説明しています。
イノベーションのジレンマが起こる理由
イノベーションのジレンマが起こる理由はたった2つです。
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- 既存プレーヤーが新市場に対して投資する合理的な理由がないから
- 新市場と既存プレーヤがターゲットとしている市場が根本的に異なるから
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たとえば、デジタルカメラ市場において既存プレーヤーは既存製品に対する顧客満足度を高めるために顧客の声に耳を傾けます。
そのため、既存プレーヤは顧客の声に応じて製品を改良改善し持続的なイノベーションを行います。
画質の改良、持ち運びやすさ(重量を減らす・コンパクトにする)などどんどん高品質化に投資をしまくります。
一方、スマホ市場において、スマホカメラはあくまでも電話・メールなどのコミュニケーションのメインツールとして使用するスマホの付随機能として打ち出されています。
しかし、だんだんとこのスマホカメラは時代が進むにつれて進化しデジタルカメラの市場のローエンド顧客の要望を満たし始めます。
ここでいうデジタルカメラ市場のローエンド顧客とは割と画質が良くて写真が撮れるなら高い高性能のカメラはいらないという顧客層のことです。
そのため、カメラ機能を安く手に入れてプロカメラマンほどの画質や性能を厭わないような顧客層は既存の最大手カメラ会社の高い製品を買わなくなってしまいます。この現象がイノベーションのジレンマの事例の一つです。
また、実は既存プレーヤはこの新市場に対して気づきはしますが対策を打つことができないのです。
なぜなら、新市場は費用対効果が悪く投資に見合う収益が見込めない、既存市場に投資した方が稼げるので魅力度が高いかつ気を抜くと競合にまけシェア率が下がるというリスクだらけだからです。
イノベーションのジレンマの対策
イノベーションのジレンマの対策を既存プレーヤーと新プレーヤーと2つの異なる目線で考えていきましょう。
まずは、既存プレーヤにおけるイノベーションのジレンマの対策です。
既存プレーヤーの弱点である要求度の低いローエンド顧客に対する知見や扱い方を重点的に手を打つことは当たり前なこと。
まず、要求度の低い顧客の要望を徹底的にリサーチしておくことです。ローエンド顧客はどこまでの製品の質を求めているのか?どの程度の価格帯なら購買指数が高いのか?を仮説検証するべきです。
通常、新規プレーヤーは既存プレーヤーに破壊的イノベーションを仕掛けて来ます。つまり、既存プレーヤーの守備範囲外のターゲットである要求度の低い顧客に対して低価格戦略を打ち出してくることは想像に硬くないでしょう。
そのため、新規プレーヤーに素早く対策するために事前リサーチが必要なのです。
既存市場においては、持続的イノベーションが要求度の高い顧客をターゲットにしている場合が多いことを踏まえれば新規プレーヤーの戦略に素早く対応するためにもハイエンド顧客ばかりに目を向けてはいけないことがわかります。
次に、新プレーヤのイノベーションのジレンマの対策です。
既存市場に対して製品の使いにくさや不便さといった負の要素に着目し、ローエンド顧客が求める必要最低の要件を満たす製品で攻め立てます。
この時注視しなければいけないのは、低価格にしすぎないことです。
価格を下げると商品の属性によっては粗末品と認識されたり、今後品質改善した後の値段調整において価格をあげることが難しくなってしまいます。
そのため、安易な値下げ戦略をするのではなく長期的な目線で最低限の値段設定をする必要があります。
持続的イノベーションと破壊的イノベーションの違いとは?
持続的イノベーションとは顧客の要望に合うよう改善改良を重ねること
持続的イノベーションの特徴は、顧客の要望に合わせて製品の品質の向上を目的に改善改良を重ね続けることです。
例えば、デジタルカメラの画質を改良したりイヤホンの音質を改善したりすることが持続的イノベーションにあたります。
最近の食品業界でいうとトッポがチョコを増量したり太さを改善して顧客に与える高級感の増幅やかみごたえの改善をしていますね。
破壊的イノベーションとは既存企業にはない使い勝手の良いサービスや低価格を提供すること
破壊的イノベーション特徴として、既存企業では実現できないようなサービスを提供したり、必要最低限の機能に絞り低価格を実現してローエンドの顧客を狙っていきます。
たとえば、ツタヤは以前はツタヤの店舗に行かないとCDやDVDをレンタルできませんでした。しかし今はNetflixなどのオンデマンド配信によってオンラインで手軽に映画や音楽を聞いたりできます。
イノベーションのジレンマの事例
デジタルカメラと携帯のカメラを例にあげてイノベーションのジレンマの事例として説明します。
そもそも前提として市場にはハイエンド顧客とローエンド顧客が存在します。
[box class="box33" title="ハイエンド顧客"]
ハイエンド顧客とは高性能や高価格を求めている顧客層を表しています。
製品の質にこだわるためなら値段を気にしません。
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[box class="box31" title="ローエンド顧客"]
ローエンド顧客とは性能は最低限でなるべく安い値段で商品を購入したいと思う人です。
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既存プレーヤーは、ハイエンド&ローエンドの顧客の要望をヒアリングしコストをかけ品質の改良を重ね、マーケットインを実現しています。
しかし、破壊的イノベーションを起こす新興企業はローエンドの顧客に注目し最低限の品質を最初のコストで仕上げて掴み取っていくものです。
そして破壊的イノベーションの製品はやがてハイエンド顧客の要望をも満たし始め既存プレーヤがたち打つできなくなってしまうのです。
実際、今現在デジタルカメラ市場は年々売上げが減少しておりさらなる高品質化で差をつけようとしていますが、プロ以外の一般的な消費者にとって高度な改良等が顧客を満足させうるという単純な構造ではなくなってきています。
イノベーションのジレンマのまとめ
よくある誤解をまとめております。
持続的イノベーションの定義はあくまでも製品の品質や特性を改良することを指しますので、連続的、漸進的とは限らないのです。
持続的という言葉につられて、連続的に製品が改良されていくことを指すと誤解しないようにしてください。
また破壊的イノベーションも革新的、突発的なものとは限りません。
言葉の定義をしっかり捉えてイノベーションのジレンマを理解すると仕事にも実践できます。